田中さん

私たちスタッフにとって、昭和暮らしな日常で欠かせない存在ナンバー1は、
やっぱり「あそびのきち おひさま」の代表の田中さん。

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「あそびのきち おひさま」

「あそびのきち おひさま」がすごいのは、形容できないほど、いろいろやっていること。
子どもたちや親たちが「子どものために」必要だと思うことを何でも引き受けてくれます。
はっきり言って、こんな場所、世界じゅうでもあまりないんじゃないかな。
そんな場所を作り出している代表の田中智子さんに、「おひさまってどんなところ?」とお話をうかがいました。

<7年かけて認めてもらった>

ーーーーーおひさまを始めた頃のことを教えてください。
「あそびのきち おひさま」は平成15年11月に資金ゼロ、でも借金もゼロで始まったんよ。だって、スタッフの時給は100円だったから!(笑)
「我が子を遊ばせて、他の子どもも一時預かりをする。」というかたちで、幼稚園の保護者の有志で、いろんなところを視察に行って、夢を語ってなあ…。
始める前に地域の子どものいる世帯全体にアンケートを取ったんよ。「学童保育が必要ですか?」って。そこには「ボランティアスタッフも募集しています。」って書いて。そうしたら、週1日でも働けるっていう人が15人くらい集まってくれて。

一方で市役所に「アンケートでいくら30人が「預けたい」って言ってくれても、実際に預けるのは半数以下。こんなところには立ち上がらんよ。」って言われたわー。
でもね、日中ひとりで孫を見ているおばあちゃんが、「いつできるん? いつから預けられるん?」って心待ちにしてくれてねえ。
1年5ヶ月くらい経ったところで、毎日利用者が11人になって、ようやく学童保育ができました。

そのころ、まわりにはいろんなことを言われたんよ(笑)! 「金儲けでしよるんじゃろ。」「何しとるんじゃろ?」
下校の道で態度が悪いのも全部「おひさま」のせい。
子どもが何かあると何でも「おひさま」のせいになっとったよ。

でもね……、実際子どもも悪かったんよー!!!(爆笑)
道すがら花を折る、ピンポンダッシュはする、
近所のお宅の壁に泥を投げたり、
あるときNおじちゃんに子どもが投げたブーメランが激突して…!
「マスカット」持って謝りに行ったわ…。

それが毎日毎日…。でも少しずつ子どもの成長が見られるようになって、おじいちゃんやおばあちゃんが応援してくれるようになったんよ。7年くらいかかったなあ。

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<失敗から得られるもの>

ーーーーーそのころから子どもたちって、どうやって成長してきたんですか。
やっぱり上の子のストレスがどんどん下に向かうんよね。ひどいときは赤ちゃんや動物を蹴ったりね。
学年が上の子のやりたいことができるように環境を整える、いつでも立ててあげるというかね。
そして親の愚痴を聴く。
そうすることで、上の子が下の子を可愛がってくれるようになって、そうされた子は自然と自分が大きくなるに従って、次の子の面倒を見てくれるようになって…。

子どもっていっぱい失敗もするんよ。
そうしたら手土産持って、連れて行って、頭を下げるのね。
そういう姿を見て、子どもって「自分が失敗しても、おばちゃんが一緒に行ってくれる。」って思えるし、失敗したらどうしたらいいかっていうことを学ぶんよね。
そうしたら、失敗してもごまかしたり隠したりせずに、きちんとおばちゃんに「報告」できるようになる。
言えたことはすばらしいことって、私たちもそこはちゃんとほめるのね。

そして不思議なことに、いろいろ頭を下げて回った地域の人と、つながりができるんよ。
それをきっかけに逆に応援してくれたりするようになってね。

友達どうしのトラブルも同じ。人を傷つけてどうしたらいいか、仲直りの経験をしていると解決の方法が分かるのね。そして友達のことがわかる。お互いの理解が進むんよね。

保護者とか大人だって、見ているとトラブルがあっても、どうしたらいいのか分からない人は、トラブルが長引くなあ。
でもおひさまでいろんな経験をして親も変わったんよ。タフになったし、柔軟になった。

 

<いろんな子どもが調和して>

ーーーーー学区外から通う子どもも増えましたね。
今は学区外からの登録数は50人くらい。
この間おひさまでいろんなところから通う子どもで合宿をしたけど、本当に落ち着いていて、こんなに落ち着いて合宿ができたのは初めて!
夏休みもいろんなところから来てくれたけど、調和しとったなあ!

障がいを持った子どもも、1人の遊び仲間として子どもたちに受け止められるようになったなあ。
例えばKちゃんは自閉症で子どもの鳴き声が嫌。お母さんも行く所がないって困っていたけど、おひさまに来て、大好きな神楽の動画を見せてもらって大興奮して身体を揺らすんだけど、
おひさまのスタッフもいつも動画を見せられるわけじゃない。「今はできんでー!」 「井田さん(動画を見せることができるおひさまスタッフ)おらんで!」って言うと、前はすごく何回も同じことを繰り返し言っていたけど、今は切り替えができるようになってな!
そうしたら他の子と遊びだしたんよ!
今また、猫がアホほどおるが(笑)。
(※おひさまには今、地域の増えすぎた猫がたくさんケージで飼われています。スタッフの池上さんが、見かねて捕獲&一時保護して、避妊(去勢)手術や飼い主探しに奔走しています。)
そうしたら、Kちゃんフワフワしたもんが大好きじゃから、またそれが良かったんよ。またひとつ世界が広がったんよ!
おひさまのスタッフも教科書どおりの関わりじゃないんだけど(笑)、そうやって子どもは育って行く姿があるなあ。

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<やっといろんな体制が整った>

ーーーーー昨年から「企業組合」になりました。
そう。やっと安心して働ける職場になったんよ。スタッフもそれぞれの持ち味を生かしてくれて、今は12人+学習支援スタッフが5人。
池上さんがスタッフで入ってくれたときから、地域の老人介護施設で慰問が始まって、それも良かったんよ。そこからおひさまの子どもたちが、地域に頼りにされるようになって。
東日本大震災のあと来られた避難者の方々もみんな「おひさますばらしい!」ってほめてくれて、大勢関わってくれている。今までやってきて、本当に良かったなあと報われる思いでした。
これからも地域が元気になるような活動を続けて行きたいと思います。

ーーーーーありがとうございました!

ここ総社市昭和地区での子どもとの暮らしからみえてくる、人との関わりの大切さ奥深さ。
おひさまにある、人と対峙するその姿勢から、日々本当にいろんな事を学んでいます。