昭和地区を旅立つ丸山さんからのメッセージ

冷たい雪が暖かい春の雨に変わり、大地に潤いをあたえています。寒さもゆるみ、眠っていた動物も目覚める頃。
思い返すと、昭和地区へ引っ越してきたのも二年前のちょうど今頃でした。

西日本豪雨で家を失い、倉敷のアパートに住んでいた私と妻にとっては、畑付きの築60年の一軒家でようやく穏やかな生活ができることが大変楽しみでした。また、近くに「あそびのきち おひさま」という子供の預かり施設もあり、子育てと仕事が両立しやすい事も魅力の一つでした。

初めての土地でしたので多少不安はありましたが、移住当初から大家さんやご近所の方々は気持ちよく接してくださり、畑や鶏小屋も色々と教えて頂きながら順調に構築できました。共同体の一員として草刈り、地域行事にも積極的に参加し、その中で生活の知恵となるようなお話を聞くのも楽しみの一つでした。

そういった結びつきのある地域で生活すると、共同体というのは人との繋がりで成り立っていると改めて感じました。子供の散歩をしているとご近所さんから野菜を頂き、こちらは卵をお返しに持っていく。その中で、地域の情報もいち早く回ってきます。天気や農作物のお話だったり、防犯のお話だったり。

現代の貨幣経済において人との繋がりが希薄になっていると言われています。しかし、ここで無意識的に実践されている交換経済こそ、これからの日本に必要となってくる要素ではないかと感じます。お付き合いをしながら、足りないものを補い合う。

美しく調和のある人生とは、そうした何気ない慎ましさを抜かしては成り立たぬものであろうと思われます。

この度、二年と少しを過ごした昭和地区を離れ、遠い異国の地で生活を始めます。短い期間でしたが、心穏やかに日々を送れたのも関わった全ての皆様のお力添えがあってこそです。ありがとうございました。

丸山知之